外貌醜状(全身)
交通事故によるケガで、日常的に人目につく傷跡が残ってしまうことを「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」と呼んでいます。
対象となるのは、頭、顔、首など日常的に露出している部分です(上肢や下肢の部分は除きます)。
外貌醜状は、例えば、頭蓋骨が陥没したり、顔の一部が欠けたり、長さ数センチにおよぶ大きな傷跡がつく――などの例が考えられます。
直接的な影響は必ずしもないものの、このように外見が著しく悪くなった場合、ほとんどの被害者の方は大きな精神的ショックを受けて苦しんだり、一般社会で満足に仕事ができなくなるなどの影響が出ています。
弁護士にご相談いただくことで、こうしたショックの慰謝料や、仕事ができなくなったことによる損害賠償などの増額を求めていくことになります。
具体的には、次のような症状が考えられます。
◇長さ数センチ~数十センチに及ぶ傷跡が残ってしまった
◇やけどの跡が残ってしまった
◇頭や顔の一部が大きくへこんでしまった、あるいは変形してしまった
◇頭や顔の一部が黒色や褐色に変わってしまった(色素が沈着している)
◇頭や顔に、白の斑点が残ってしまった(色素が失われている)
ただしこれらは、頭、顔、首など、ふだんから露出して人目に付く部分に関しての基準です。
首から下(つまり通常は衣服で隠れる部分)に関しては適用されません。
例えば上肢(肩から先の腕と手)や下肢(股関節から先の足)、胸や腹、背中や腰などにこのような「醜状」が残ってしまった場合は、それぞれの部位ごとに定められている基準で決められます。
かつては女性の認定等級が男性よりも重い時代がありましたが、2011年の法改正により、現在では男女とも同じ基準となっています。
関係する自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は次の通りです。
▽第7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの
(1)頭部に残った手の平大(指の部分は含まない)以上の瘢痕または頭蓋骨の手の平大以上の欠損
(2)顔面部に残った鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没
(3)頸部に残った手の平大以上の瘢痕
▽第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
(1)顔面部に残った長さ5センチメートル以上の線状痕
▽第12級14号 外貌に醜状を残すもの
(1)頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
(2)顔面部に残った10円硬貨以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕
(3)頸部に残った鶏卵大以上の瘢痕
それぞれの等級の(1)(2)(3)で決められているように、傷の大きさや深さなどである程度具体的な線引きはされています。
しかし慰謝料だけでなく、社会生活を送れなくなったことによる損害(逸失利益)の賠償という名目で、受け取れる金額を積み上げられる可能性もあります。