交通事故の種類とは?種類別の件数ランキング・割合も紹介します
交通事故と一口にいっても、交通事故にはさまざまな種類があります。
どの種類の交通事故かによって、加害者の責任や年間の発生件数はかわってきます。
この記事では、交通事故の種類と、種類別の件数ランキング(割合)をお伝えします。
交通事故は二つの観点から分類できる
交通事故の種類と一口にいっても、交通事故の分類方法は二種類あります。
「死傷者の有無」でわけた場合の交通事故の種類
死傷者(ケガ人と死者の総称)の有無でみた場合、交通事故は「人身事故」と「物損事故」の二種類に大別されます。
人身事故とは、ケガ人や死者が発生した交通事故を意味します。たとえば、運転中にたまたま人を引いてしまってケガを負わせてしまった場合は人身事故となります。
一方で物損事故は、何かしらのモノを破損させただけで死傷者が発生しなかった交通事故を指します。とくに運転手自身の過失だけで生じた交通事故は「自損事故」とよばれます。
踏切内で電車と接触するような重大な交通事故から、ガードレールにかるく接触するような軽い事故も物損事故に含まれます。
「事故の当事者」でわけた場合の交通事故の種類
交通事故は「事故の当事者に誰が含まれるか?」という視点でも分類できます。この視点で分類すると、交通事故は下記の三種類にわけられます。
- 人対車両:車両と人(通行人など)が当事者の交通事故
- 車両相互:複数の車両が当事者となる交通事故
- 車両単独:一つの車両のみが当事者となった(第三者を巻き込んでいない)交通事故
物損事故と人身事故を起こした加害者が負う責任とは
おなじ交通事故であっても、物損事故と人身事故では加害者が負う責任にちがいがあります。
「加害者の負う責任」の観点から、物損事故と人身事故の違いをお伝えします。
物損事故の加害者が負う責任
物損事故の場合、飲酒運転や速度超過が原因でないかぎり刑事責任を問われることはありません。
また、免許の取り消しや減点といった行政処分を課されることも原則ありません。
ただし物損事故の加害者には、民事責任が発生します。具体的には、破損させてしまった車などの修理費用の支払い責任が生じます。
人身事故の加害者が負う責任
一方で人身事故は、他人に害を直接的に与えている点で、物損事故よりも責任の重い交通事故となります。
具体的には、「刑事責任」、「行政責任」、「民事責任」の計三つの責任をおいます。この項では、三つの責任についてそれぞれくわしく解説します。
刑事責任
交通事故で人身上の被害を加えた場合、「過失運転致死傷罪」または「危険運転致死傷罪」のいずれかが課されます。
通常の人身事故
一般的な人身事故では、「過失運転致死傷罪」が適用されます。過失運転致死傷罪による処罰の内容は、自動車運転処罰法第五条につぎのとおり記されています。
“自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。”
つまり人身事故をおこした場合には、七年以下の懲役・禁錮刑もしくは百万円以下の罰金刑を課されるおそれがあるわけです。ただしケガの程度が軽い場合には、罪が免除されます。
悪質な人身事故
悪質な行為により人身事故を発生させた場合には、より重い「危険運転致死傷罪」が適用されます。危険運転致死傷罪の内容は、自動車運転処罰法第二条に以下のとおり記されています。
“次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為”
要するに、飲酒や危険運転などにより交通事故をおこし、第三者に危害を加えた場合には、より重い刑罰が課されるというわけです。
行政責任
人身事故をおこした場合には、「基礎点数」と「付加点数」が課せられます。
基本的には、基礎点数として「安全運転義務違反」の2点が課されます。
付加点数については、交通事故の種類や被害者側の過失度合いに応じて、下記の通り決定します。
交通事故の種別 | 被害者の過失 | |
なし | あり | |
死者が発生する交通事故 | 20点 | 13点 |
全治三ヶ月以上のケガまたは後遺障害が生じる交通事故 | 13点 | 9点 |
全治30日以上3ヶ月未満のケガが生じる交通事故 | 9点 | 6点 |
全治15日以上30日未満のケガが生じる交通事故 | 6点 | 4点 |
全治15日未満のケガが生じる交通事故 | 3点 | 2点 |
参考:警視庁
民事責任
人身事故をおこした場合には、民事責任として損害賠償責任が発生します。
ケガの治療費はもちろん、精神的障害や仕事を休んだぶんの休業損害も支払う必要があります。
ただし損害賠償保険に加入していれば、保険金により一部もしくは全額を負担することが可能です。
交通事故の種類別件数ランキング〜もっとも多い交通事故の類型は何なのか?〜
最後に、事故の当事者で分類した場合の交通事故の種類(類型)別件数ランキングをおつたえします。
「人対車両」、「車両相互」、「車両単独」のうち、どの種類の交通事故がもっとも多いのでしょうか?
なお今回は、警察庁が公表している「平成29年度中の交通事故の発生状況」を参考にしています。
1位:車両相互の事故
三種類のうちもっとも多かったのは、車両相互の交通事故でした。
全交通事故472,096件(列車の事故を除く)のうち、車両相互の交通事故は408,812件にのぼっています。
割合で言うと約87%を占めており、多くの交通事故が車両同士のものであることがみてとれます。
細かくみていくと、「追突事故」が167,845件ともっとも多く、ついで「出会い頭の衝突」が115,704件にのぼっています。
2位:人対車両
二番目に多かった種類が、人対車両の交通事故でした。
全交通事故472,096件(列車の事故を除く)のうち、人対車両の交通事故は50,756件にのぼっています。
割合で言うと約11%をしめており、車両相互の事故と比べるとあまり件数自体はおおくありません。
くわしい事故の状況をみると、人が横断中の事故が29,235件と半数以上をしめています。
3位:車両単独
そしてもっとも少ない種類だったのが、車両単独による交通事故でした。
全交通事故472,096件(列車の事故を除く)のうち、車両単独の交通事故は12,528件と非常に少ないです。
車両単独の交通事故のほとんどは、工作物への衝突(5,774件)と転倒(3,014件)となっています。
交通事故の種類に関するまとめ
交通事故の種類は、「死傷者の有無」と「事故の当事者」という二つの観点から分類できます。
死傷者の有無でみていくと、物損事故と人身事故の二種類にわけられます。被害者が存在する人身事故の方が、加害者が負うべき責任が重いので注意が必要です。
一方で事故の当事者でみると、人対車両、車両相互、車両単独の三種類に分類されます。この中でもっとも多いのは、車両相互の事故となっています。
追突事故や出会い頭の衝突がとくに多く、これらの事故では比較的人的な被害が発生しやすいです。
運転を行う際は、重大な交通事故をおこさないように十分な注意が必要です。