腹部
交通事故で、腹部にダメージを受ける例をご紹介します。
いうまでもなく腹部には、臓器が多数あります。胃腸や肝臓、食道などの消化器、腎臓や膀胱、尿管などの泌尿器、睾丸や子宮、卵巣などの生殖器が挙げられます。
腹部の臓器がダメージを受けるケースは、交通事故のケガ全体の10%に満たず、比較的少ない部類には入ります。
しかしケガの程度の解釈には幅があるケースが多く、さらにケガの程度が確定したとされる「症状固定」のあとに症状が変化することもあるため、認定程度をめぐってしばしば争いの元となります。
腹部のケガでよく見られるケースは、具体的には次の通りです。
◇胃や腸を失ってしまった、あるいは短く(狭く)せざるを得なくなってしまった
◇食べ物が消化されにくくなってしまった
◇胃腸の内容物が皮膚から漏れ出てしまうようになった
◇肝臓を失ってしまった、あるいはその機能を失ってしまった
◇腎臓を失ってしまった、あるいはその機能を失ってしまった
◇尿管や膀胱などを失ってしまった、あるいはその機能を失ってしまった
◇尿を漏らしやすくなってしまった
◇尿意を催しやすくなってしまった、あるいは残尿感を覚えやすくなってしまった
◇生殖器(睾丸や子宮など)を損傷して生殖機能を失ってしまった
また胃腸の機能を損なうと、吐き気や胸やけが頻繁に起こったり、食欲が減退したり、それに伴って健康的な食生活ができなくなったりするなどの悪影響が出る可能性があります。
さらに肝臓や腎臓の機能にダメージが出ると、体内の毒素を分解することができなくなる可能性もあります。
腹部のケガに関係する自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は次の通りです。
▽第3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
▽第5級3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
▽第7級5号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
▽第7級13号 両側の睾丸を失ったもの
▽第9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
▽第9級17号 生殖器に著しい障害を残すもの
▽第11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
▽第13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
ただ第3級4号にある「終身労務に服することができない」とまで認めてもらえるケースは現実には少なく、それより下の等級で認定を争うケースがほとんどです。
とはいえ、例えば同じ「臓器の機能に障害」が残るケガでも、「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」場合(第5級)と、「軽易な労務以外の労務に服することができない」場合(第7級)を比較すると、受け取れる慰謝料の額も異なってきます。