胸部
交通事故で、胸部にダメージを受ける例をご紹介します。
肺や横隔膜などの呼吸器と、心臓や心嚢などの循環器があります。
ダメージを受けると、息切れ、呼吸困難(呼吸不全)などの症状や、心肺機能の低下による運動能力の低下が現れます。
胸部のケースは、交通事故のケガ全体の10%に満たないので、比較的少ない部類には入りますが、ペースメーカーや除細動器をつける必要が出てくるなど、重大な影響が残ることがあります。
具体的には、次のような症状となっている方が多いようです。
◇胸の骨(肋骨など)が折れた、または変形した
◇呼吸器が損傷し、呼吸することが難しくなった
◇動悸や息切れがしやすくなった。そのために体を動かしたり、歩いたりすることが苦しくなった
◇食道を損傷し、物を食べたり飲んだりすることが難しくなった
また事故当時に車に乗っていた方で、シートベルトやエアバッグが原因となるケガも目立ちます。
シートベルトは胸の部分に対角線状に当てるため、衝突した瞬間の強い衝撃で、ベルトが体に食い込みます。
また衝突した瞬間にエアバッグが膨れた衝撃を受けて胸の骨が折れ、肺や心臓を傷つけることもあります。
このため、鎖骨や肋骨の骨折を招きやすいほか、肺挫傷や血気胸を引き起こしやすい、という研究結果も報告されています。
またケガを負って数か月もたってから炎症を起こし、手術せざるを得なくなるケースもありますので、決して油断できないのが特徴です。
関係する自賠責保険の後遺障害等級の認定基準は次の通りです(基準としては腹部とあわせて「胸腹部」と呼ばれます)。
▽第3級4号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
▽第5級3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
▽第7級5号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
▽第9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの
▽第11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
▽第13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
「臓器の機能に障害」が残る点は同じであっても、第3級4号の「終身労務に服することができない」ことを認定してもらうのはハードルが極めて高く、現実にはほとんどみられないのが実情です。
とはいえ、「特に軽易な労務以外の労務に服することができない」場合(第5級)と、「軽易な労務以外の労務に服することができない」場合(第7級)を比較すると、受け取れる慰謝料の額も異なってきます。
ケガを負って時間がたった後に症状が悪化することも十分にありえます。
受診記録はきちんと保存し、迷わず弁護士にご相談ください。