損益相殺
交通事故用語集に戻る→交通事故を起因して被害者が受け取った利益について、二重取りは公平の観点から許されませんので、損害賠償額から控除すべきかどうか問題となります。
そして、被害者が受けた利益額を損害賠償額から控除される場合のことを、損益相殺といいます。
損益相殺の問題について、その給付が本来損害の填補を目的としているものかどうか、給付原因が交通事故と因果関係があるのかどうか、給付の趣旨から控除するのか妥当かどうか、その給付が損害賠償制度との調整規定があるかどうか、給付の費用負担者は誰なのか、負担した費用との対価性があるかどうか、という観点から判断されることになります。
控除されるものと控除されないものの例は、次のとおりとなります。
控除されるもの
公的保険制度による給付
- 労災保険法で規定されている保険給付金(療養補償給付、休業補償給付、障害補償年金、障害補償一時金、障害補償年金前払一時金、長期傷病補償給付、傷病補償年金等)
- 健保、国保等の公的医療保険制度による給付金
- 国民保険、厚生年金、公的共済年金等の公的年金制度による給付金
- 介護保険制度による給付金
- 自賠法16条による被害者請求で支払われる損害賠償額(賠償金の二重取りになるため)
- 政府の自動車損害賠償補償事業による填補金
任意保険会社からの支払いについて
- 搭乗者傷害保険の支払い
- 無保険車傷害保険の支払い
- 所得補償保険の支払い
控除されないもの
見舞金など
- 加害者の支払った香典
- 会社の業務災害特別支給規定の基づく見舞金、傷害見舞金など
労災保険法による特別支給金等
- 休業特別支給金、障害特別支給金(損害填補の性質を有する保険給付ではないため)
- 傷病特別年金
- 障害特別年金
- 障害特別年金差額一時金
- 労災就学等援護費
自動車保険以外の私保険からの給付
- 生命保険金(被害者が負担した保険料の対価であるため)
- 生命保険の傷害、入院給付金(被害者が負担した保険料の対価であるため)
その他の公的給付
- 身体障害者福祉法に基づく給付金
- 生活保護法による扶助費
- 雇用保険法による給付金
- 特別児童福祉手当
- 介護費用の公的扶助
その他
- 賠償責任保険は、加害者に代わって賠償金を支払うものであるため、損益相殺の問題とはなりません。もっとも、任意保険に被害者に直接請求権が定められており、これに基づいて支払が行われると、損害額から控除されることになります。
- 自損事故保険は、一般的に加害者がいない事故であることから、そもそも損益相殺の問題となりません。
- 人身傷害補償保険は、一般的に控除される自体は否定できません。