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素因減額

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判例では、被害者が有していた事由(素因)が損害の発生または拡大に影響している場合には、損害を公平に分担させるという見地から、過失相殺の規定を類推適用して、一定の限度で当該事由を斟酌できるとされています。

そのため、素因が損害の発生または拡大に影響している場合には、その素因を考慮して、損害賠償額を減額できるかどうか問題となります。
 
素因について、実務上、「心因的素因」と「体質・身体的素因」に分類されています。

1 心因的素因について
  
「心因的素因」とは、被害者の精神的傾向のことをいいます。例えば、被害者の特異な性格、うつ病などがこれにあたります。
  
心因的素因に関して、裁判例では、原因となった事故が軽微で通常人に対し心理的影響を与える程度のものではなく、自覚症状に見合う他覚的な医学所見もなく、一般的な加療相当期間を超えて治療を必要とした場合には、その心因的素因を斟酌して、素因減額がなされる傾向にあります。

2 体質・身体的素因
 
「体質・身体的素因」とは、既住の疾患や身体的特徴のことをいいます。例えば、椎間板ヘルニア、糖尿病・高血圧、心臓疾患の既住症があること、首が長く多少の頚椎不安症があることなどがこれにあたります。

裁判例では、体質・身体的素因に関して、次のとおりの考え方に基づいて、素因減額の判断がなされる傾向にあります。

①被害者の疾患が損害の発生または拡大に寄与していることが明白な場合には、当該疾患を斟酌して、素因減額がなされる。

②加齢的変性による体質的素因については、事故前に疾患といえるような状態であったことが認められない限り、当該素因を斟酌せず、素因減額はなされない。

③身体的特徴については、疾患に比肩すべきもので、被害者が負傷しないように慎重な行動を求められるような特別の事情が存在しない限り、斟酌せず、素因減額がなされない。

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