交通事故における損害賠償額に関する損益相殺(そんえきそうさい)について
あなたが交通事故を起こし加害者になってしまい、相手側の被害者が一定の利益を受けたときは、その利益額は加害者が支払う損害賠償額から控除される(差し引いてもらえる)場合があります。
これを「損益相殺(そんえきそうさい)」といいます。
一定の利益が一般的に控除されるかどうかは、以下のとおりとなっていますのでご確認ください。
①加害者が被害者に支払った香典や見舞金
明らかに高額である場合を除き、損害賠償額から控除されません。
②公的保険制度による給付
・労災保険法(仕事中に怪我をしてしまった場合、本人またはその家族を守ることを目的にした法律)で規定されている保険給付は、原則として、損害賠償額から控除されます。
・健康保険・国民健康保険等の公的医療保険制度による給付や国民保険・厚生年金・公的共済年金等の公的年金制度による給付についても、損害賠償額から控除されることになります。
・介護保険制度給付についても、損害賠償額から控除されます。
・自賠法16条による被害者請求で支払われる損害賠償額(被害者が自ら資料を揃え、加害者の自賠責保険会社に提出しもらう賠償額)は賠償金の2重取りになるため、これについても損害賠償額から控除されることになります。
・政府保障事業によるてん補金についても損害賠償額から控除されます。
③任意保険からの支払
・賠償責任保険(偶然の事故により第三者に対する法律上の賠償責任を被保険者が負担した場合に、賠償金の支払や負担する費用を填補する保険)は、加害者に代わって賠償金を支払うものであるため、損益相殺の問題とはなりません。もっとも、任意保険に被害者に直接請求権が定められており、これに基づいて支払いが行われると、損害賠償額から控除されることになります。
・搭乗者傷害保険(車中の全員を対象に、自動車事故で受傷した部位や内容に応じて、あらかじめ決められた金額が支払われる保険)については、損害賠償額から控除されません。
・自損事故保険(運転手自らの責任で起こした事故で死亡、または後遺症が残った場合のための保険)は、一般的に加害者がいない事故であるためそもそも損益相殺の問題となりません。
・無保険車傷害保険(対人賠償保険などがついていない無保険自動車との事故により、被害者が死亡または後遺障害を被った場合で、加害者から十分な補償を受けられないときのための保険)については、傷害保険とされるため損害賠償額から控除されます。
・人身傷害補償保険(自分や同乗者のケガや死亡を補償する保険)については、一般的に損害賠償額から控除される自体は否定できません。
④自動車保険以外の私保険からの給付
・生命保険は被害者が負担した保険料の対価であることから、損害賠償額から控除されません。
・生命保険の傷害・入院給付金についても、同様に損害賠償額から控除されません。
・所得補償保険については、損害賠償額から控除されることになります。
⑤その他の公的給付
・生活保護法による給付は、損害賠償額から控除されません。
・雇用保険からの給付についても、損害賠償額から控除されません。